“…。しかし,尿は排泄後に時間が経 過すると乾燥して回収できなかったり,排尿場所によっ ては全く回収ができない場合がある。そのため,より 採取が容易な糞を用いた研究が,その後 1990 年頃から 飼育下および野生下で発表されるようになった (Lasley and Kirkpatrick, 1991;Wasser et al, 1988;Ziegler et al, 1989) 。雌の性ホルモン(特に種特異性のない性ステロ イドホルモン)濃度を分析することで,春機発動(繁 殖能力の発現開始) ,発情期(排卵期) ,妊娠の有無, 陰部腫脹との関係などが明らかにされてきた (Carroll et al, 1990;Curtis et al, 2000;Dahl et al, 1987;Heistermann et al, 1996;Kinoshita et al, 2017;Shimizu, 2005;Shimizu et al, 2003) Fourie et al, 2016) Fairbanks et al, 2011;Henley et al, 2013;Vliegenthart et al, 2016;Yamanashi et al, 2013) (Maggioncalda et al, 1999;Marty et al, 2015) ,その間に成長ホルモンの濃度も上昇 することが確認されている (Maggioncalda et al, 2000) 。 ただし,野生オランウータンにおける遺伝解析により, アンフランジ(フランジがない)雄でも子の父親になっ ていることが確認されており (Goossens et al, 2006) (Prudom et al, 2007;Roberts et al, 2001;Soltis et al, 2005;Ziegler and Snowdon, 2000;Ziegler et al, 1996) (Woods, 1975) Pettitt et al, 2007) 。糞中の水分含量が高いと,より一層細菌による 代謝は活発になる (Palme, 2005 (Khan et al, 2002;Palme, 2005;Pettitt et al, 2007;Woods, 1975 (Kinoshita et al, 2016) 。オランウータンやチンパンジーにおいて, 有機溶媒を用いてフィルターペーパーからホルモンを 抽出し分析に成功している研究例もある (Seraphin et al, 2008;Shideler et al, 1995;Thompson and Knott, 2008) 。 このように,調査地の状況に合わせてどのような保存 方法をとるべきかについても,予備実験で確認してお くことが重要である。また,近年は「Field-Friendly 法」 として,保存過程を経ずに野外で直接サンプルからホ ルモンを抽出し実験室に抽出物を持ち帰って分析して い る 例 も あ る (Nugr...…”