小川 憲人 1) 椙田 浩文 1) 加藤 敬二 1) 根木真理子 4) 小嶋 一幸 3) 杉原 健一 1) 1) 東京医科歯科大学大学院腫瘍外科 2) 中野総合病院外科 3) 東京医科歯科大学低侵襲センター 4) 東京医科歯科大学病理部 症例は 79 歳男性で,心窩部痛・嘔吐を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で穹窿部に径 10 cm の隆 起性病変を認め,CT で原発巣とリンパ節腫大を認めるも遠隔転移はなく,AFP は 263.0 ng/ml であった. AFP 産生を伴う胃癌肉腫 U,Post,type 1,cT3N1M0,cStageIIB と術前診断し,胃全摘術(D2 郭清) ,Rouxen-Y 再建を施行した.肉眼的に 13.5 cm 大で,病理組織学的には肉腫細胞が主体で腺癌細胞が混在し移行 性はなく,免疫染色検査にて腺癌細胞は上皮系マーカーが,肉腫細胞は間葉系マーカーが陽性となり,真 性胃癌肉腫 T3(SS) ,N3a,Stage IIIB と診断した.AFP は腺癌細胞において陽性であった.術後 3 か月で 肝転移再発し,術後 6 か月で原病死した.真性胃癌肉腫は有効な治療法がなく予後不良である.また,こ れまでの報告は 15 例とまれで,AFP 産生の胃癌肉腫の報告は 2 例目である. キーワード:癌肉腫,胃癌肉腫,AFP はじめに 本邦における真性胃癌肉腫のこれまでの報告は 15 例とまれで,AFP 産生を伴う胃癌肉腫では 1 例のみ と非常にまれである 1 )~ 15 ) .今回,AFP 産生を伴う真性胃癌肉腫の 1 例を経験したので報告する. 症 例 症例:79 歳,男性 主訴:心窩部痛,嘔吐 既往歴:76 歳 腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を施行され,その際に高血圧,痛風,慢性腎不全, 脂質異常症を指摘され,経過観察されていた. 生活歴:飲酒歴なし.喫煙歴は 20 本/day を 55 年間. 現病歴:上記主訴にて,当院消化器内科受診した.上部消化管内視鏡検査にて,胃穹窿部に隆起性病変 を認めた.生検で胃癌肉腫と診断され,手術目的に当科に転科した. 入院時現症:身長 174.5 cm,体重 59 kg,血圧 126/57 脈拍 90 回/分,体温 37.9°C.腹部は平坦・軟で圧 痛を認めなかった.腫瘤は触知しなかった.上中下腹部正中切開の手術痕を認めた. 血液生化学検査所見:WBC 13,800/μl,Neu 93.0%,CRP 13.09 mg/dl と炎症反応の上昇を認めた.また, 〈2013 年 5 月 22 日受理〉別刷請求先:石場 俊之 〒 113-8510 文京区湯島 1-5-45 東京医科歯科大学腫瘍外科 日本消化器外科学会雑誌.2013;46(11):814-821 症例報告