2020
DOI: 10.4467/16890027ap.20.011.13266
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Antifreeze Water-Rich Dormant Cysts of the Terrestrial Ciliate Colpoda cucullus Nag-1 at −65 ℃: Possible Involvement of Ultra-Antifreeze Polysaccharides

Abstract: We found that the water-rich (osmolality below 0.052 Osm/l) wet resting cysts of the soil ciliate Colpoda cucullus Nag-1 were tolerant to extremely low temperature (−65℃). When cell fluid obtained from the resting cysts was cooled at −65℃, small particles of ice crystals did not grow into large ice crystals. At −65℃, the cysts shrank due to an outflow of water, because a vapor pressure difference was produced between the cell interior and freezing surrounding medium. The osmolality of these shrunk cells was es… Show more

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“…本総説で取り上げるコルポーダ・ククルス(Colpoda cucullus)は,繊毛虫門に属する原生生物である。繊毛虫門 は,単系統の分類群であるにもかかわらず,多種多様に進 化した約8,000種を超える種が世界中に生息していると考え られている 33) 。繊毛虫は,体表に繊毛が規則的に並んだ繊 毛列が形成される,細胞の生命維持機能を司る大核と生殖 や遺伝を司る小核の2種類の核を有する,有性生殖である 接合を行う等の特徴をもつ。もしこの総説をきっかけに繊 毛虫に興味を持って頂けたなら, 『原生生物学事典』の繊毛 虫 71) や『The Ciliated protozoa』 33) に是非ともあたってい ただきたい。 繊毛虫は,優れた環境適応能力をもち,多様な環境に生 息している。たとえば,降雨により生じた水たまりから, いきものの生息に適しているとは思えないナミブ砂漠のよ うな環境にまで,広く生息している 12) 。単細胞生物であり ながら,土壌の水分がない乾燥した環境中にでさえ,多く の繊毛虫が生存する。VargasとHattori 80) の記載によれ ば,1gの乾燥土壌中に約3万の繊毛虫が観察され,その うち約5千がコルポーダ(Colpoda)と推測される 57) 。コル ポーダをはじめとする繊毛虫が多様な環境に適応できるの は,様々な環境ストレス耐性を有する休眠シストを形成す ることができるからである 19,20,83) 60,62,63) 。この細胞内 Ca 2+ 依存的に活性化する, 「休眠シ スト誘導シグナル伝達松岡系」は,2009年に薬理学的に示 唆され,徐々に分子レベルで裏付けされてきた 38,39) 。PKA によりリン酸化されるタンパク質群の明確な機能は未だ実 証できていないが,様々な先行研究の情報をもとに,それ らが細胞周期の停止やアポトーシス抑制など休眠シスト形 成における様々な細胞イベントに関与することが示唆され ている。近年の次世代シーケンサーを使用したトランスク リプトーム解析では,さらに下流のシグナル伝達系やシス ト形成過程における遺伝子発現変化も解明された 24,47) 。こ 1,2 , Shuntaro HAKOZAKI 1 , Hiroki YAMANOBE 1 , Takeru SAITO 1 , Kazuma YABUKI 1 , Yuta SAITO 1 1 福島工業高等専門学校 化学・バイオ工学科(〒970 -8034 福島県いわき市平上荒川字長尾30) 2 現所属:高知大学理工学部(〒780 -8520 高知県高知市曙町2 -5 -1) れらのシグナル伝達系の詳細は,別の総説を参照された い 72) 。 コルポーダの休眠シストが誘導されると,約数時間で細 胞が球形に変化し 1) ,繊毛虫の特徴である繊毛は吸収され る 14,37) 。そして,細胞はシスト壁とよばれる数層の特殊な 膜とカラ(シスト壁;図2)に囲まれる 17) 。細胞の球形化と 繊毛の吸収にはアクチンとチューブリンの脱重合を伴う細 胞骨格ダイナミクスが関与し 65) ,細胞内部でも大がかりな 細胞イベントが進行する 14,37) 。特に,オートファゴソーム よる自食作用は顕著であり 14) ,シスト誘導24時間以内で, 細胞の mRNA 量とタンパク質の総量が通常状態の2割程度 にまで減少する 66) 。細胞の代謝を支えるミトコンドリアも 例外でなく,シスト誘導後約5時間でミトコンドリア膜電 位が消失しはじめ 14,66) ,これと同調して ATP シンターゼβ 鎖タンパク質(Syn-β)の発現レベルも減少する 64,66) 。最終 的には,一部のミトコンドリアが分解される様子が電子顕 微鏡観察で確認できる 14) 。これらの事実は,ミトコンドリ アによる代謝が停止することを強く示している。 5,28) である 乾燥休眠(アンヒドロビオシス,Anhydrobiosis)…”
Section: .繊毛虫と休眠シストunclassified
“…本総説で取り上げるコルポーダ・ククルス(Colpoda cucullus)は,繊毛虫門に属する原生生物である。繊毛虫門 は,単系統の分類群であるにもかかわらず,多種多様に進 化した約8,000種を超える種が世界中に生息していると考え られている 33) 。繊毛虫は,体表に繊毛が規則的に並んだ繊 毛列が形成される,細胞の生命維持機能を司る大核と生殖 や遺伝を司る小核の2種類の核を有する,有性生殖である 接合を行う等の特徴をもつ。もしこの総説をきっかけに繊 毛虫に興味を持って頂けたなら, 『原生生物学事典』の繊毛 虫 71) や『The Ciliated protozoa』 33) に是非ともあたってい ただきたい。 繊毛虫は,優れた環境適応能力をもち,多様な環境に生 息している。たとえば,降雨により生じた水たまりから, いきものの生息に適しているとは思えないナミブ砂漠のよ うな環境にまで,広く生息している 12) 。単細胞生物であり ながら,土壌の水分がない乾燥した環境中にでさえ,多く の繊毛虫が生存する。VargasとHattori 80) の記載によれ ば,1gの乾燥土壌中に約3万の繊毛虫が観察され,その うち約5千がコルポーダ(Colpoda)と推測される 57) 。コル ポーダをはじめとする繊毛虫が多様な環境に適応できるの は,様々な環境ストレス耐性を有する休眠シストを形成す ることができるからである 19,20,83) 60,62,63) 。この細胞内 Ca 2+ 依存的に活性化する, 「休眠シ スト誘導シグナル伝達松岡系」は,2009年に薬理学的に示 唆され,徐々に分子レベルで裏付けされてきた 38,39) 。PKA によりリン酸化されるタンパク質群の明確な機能は未だ実 証できていないが,様々な先行研究の情報をもとに,それ らが細胞周期の停止やアポトーシス抑制など休眠シスト形 成における様々な細胞イベントに関与することが示唆され ている。近年の次世代シーケンサーを使用したトランスク リプトーム解析では,さらに下流のシグナル伝達系やシス ト形成過程における遺伝子発現変化も解明された 24,47) 。こ 1,2 , Shuntaro HAKOZAKI 1 , Hiroki YAMANOBE 1 , Takeru SAITO 1 , Kazuma YABUKI 1 , Yuta SAITO 1 1 福島工業高等専門学校 化学・バイオ工学科(〒970 -8034 福島県いわき市平上荒川字長尾30) 2 現所属:高知大学理工学部(〒780 -8520 高知県高知市曙町2 -5 -1) れらのシグナル伝達系の詳細は,別の総説を参照された い 72) 。 コルポーダの休眠シストが誘導されると,約数時間で細 胞が球形に変化し 1) ,繊毛虫の特徴である繊毛は吸収され る 14,37) 。そして,細胞はシスト壁とよばれる数層の特殊な 膜とカラ(シスト壁;図2)に囲まれる 17) 。細胞の球形化と 繊毛の吸収にはアクチンとチューブリンの脱重合を伴う細 胞骨格ダイナミクスが関与し 65) ,細胞内部でも大がかりな 細胞イベントが進行する 14,37) 。特に,オートファゴソーム よる自食作用は顕著であり 14) ,シスト誘導24時間以内で, 細胞の mRNA 量とタンパク質の総量が通常状態の2割程度 にまで減少する 66) 。細胞の代謝を支えるミトコンドリアも 例外でなく,シスト誘導後約5時間でミトコンドリア膜電 位が消失しはじめ 14,66) ,これと同調して ATP シンターゼβ 鎖タンパク質(Syn-β)の発現レベルも減少する 64,66) 。最終 的には,一部のミトコンドリアが分解される様子が電子顕 微鏡観察で確認できる 14) 。これらの事実は,ミトコンドリ アによる代謝が停止することを強く示している。 5,28) である 乾燥休眠(アンヒドロビオシス,Anhydrobiosis)…”
Section: .繊毛虫と休眠シストunclassified
“…During encystment in Colpoda , the cell is surrounded by a cyst wall formed by an outermost layer (the ectocyst) and several inner layers (the endocyst) (27,28). The cysts have little metabolic activity but have extreme tolerance against environmental stresses such as desiccation (29), high and low temperatures (30), freezing (31,32), UV irradiation (33), acids and alkalis (34,35), electrostatic exposure (36), and gamma irradiation (37,38). Although water is an essential factor in protist survival, they can nevertheless survive even in arid terrestrial environments by forming resting cysts.…”
Section: Introductionmentioning
confidence: 99%