APRVにより致命的な肺胞出血から救命し得た<i>BCR-ABL1</i>融合遺伝子陰性非定型慢性骨髄性白血病の1例

Abstract

宿谷 結希 1) 武藤 秀治 2) 小沼 亮介 2) 3) 岸田 侑也 2) 3) 小西 達矢 2) 3) 海渡 智史 2) 3) 宮脇 修一 2) 富山 順治 2) 要 旨 53 歳，男性．非定型慢性骨髄性白血病(atypical chronic myeloid leukemia：aCML)に対し化学療法開始 後，播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation：DIC)に伴う致命的な肺胞出血を合併 した．物理的な止血効果を得るために，気道圧開放換気(airway pressure release ventilation：APRV)による 平均気道内圧を高めた呼吸器管理を行った．その結果，呼吸状態の維持を図りつつ原病の治療を進めることがで き，DICが改善し，救命し得た症例を経験した．APRVは，凝固異常を伴った肺胞出血に対して有用な止血手段 の 1 つと考えられた． 〔日内会誌 110：613～621，2021〕 ポイント ・ 肺胞出血はしばしば造血器腫瘍とその治療に合併し得る致死的な病態であり，時に集中治 療室での治療を必要とし，救命困難であることも多い． ・ APRVは，気道内圧を高めた持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure： CPAP)にごく短時間の圧開放時間を設定したものである． ・ APRVは，肺胞内圧を高く維持することで，毛細血管からの出血を物理的に止血できる可能 性があり， また， 圧開放時間が短時間であるため， 圧開放中も内因性呼気終末陽圧 (positive end-expiratory pressure：PEEP)をかけ，肺胞虚脱を防ぐことができる．