阪神淡路大震災以降,鉄道ラーメン高架橋柱等を対象に耐震補強工事が進められている.著者らは新し い耐震補強工法として,既設 RC 柱部材の外周に帯鋼板を配置して RC 柱の四隅のみで帯鋼板を柱に固定 する工法を考案し,耐震補強効果を確認する目的で実物大規模の試験体の交番載荷実験を行った.その結 果,RC 柱外周に一定量以上の帯鋼板を配置することで,RC 柱部材の変形能力を改善できることを確認し た.また,RC 柱の四隅での帯鋼板の固定方法が RC 柱部材の変形能力に影響を及ぼすことを確認した. Key Word:RC column, seismic retrofitting method, steel plate 1.はじめに 1995 年 1 月 17 日に発生した阪神淡路大震災以降,破 壊形態が脆性的なせん断破壊先行となる鉄道ラーメン高 架橋の柱部材等の耐震補強工事が進められている.この 耐震補強工事は,部材の破壊形態を曲げ降伏先行に変え て,変形能力を大きく向上することを基本としており, その工法としては鋼板巻き耐震補強 1) が一般的に用いら れている. しかしながら,高架下を店舗や事務所として利用して いる箇所では,狭隘な空間であるために施工機械が使用 できない等の理由から,鋼板巻き耐震補強が困難な箇所 が多くあり,人力のみで施工可能な耐震補強工法が求め られている. 著者らは,これまでにも耐震補強工法 2) の開発・実用 化を行ってきたが,こうした背景から,新たな耐震補強 工法として,帯鋼板を既設 RC 柱の外周に配置し,隅角 部のみで RC 柱に固定する耐震補強工法を考案した.図 -1 に本工法の概念図を, 写真-1 に実際の耐震補強状況を 示す.この工法は,事前にかみ合わせ継手を有する帯鋼 板を柱外周に取り付けるために,柱の隅角部に配置した 弾性ゴム材を圧縮変形させて閉合する.その後,柱の隅 角部において,柱と帯鋼板の間にモルタルを充填して, 柱部材と固定するものである.一般的な鋼板巻き耐震補 強では,柱高さ相当の大きさの鋼板を曲げ加工する機械 が必要であるが,本工法の場合,鋼板の曲げ加工が容易 にできるとともに,柱の断面形状が平行四辺形のような 場合でも容易に対応できる.また,かみ合わせ継手(写 真-2 参照)を用いることで現場での溶接作業が省略でき るとともに,材料の運搬・取り付けに施工機械を必要と しないなどの利点が考えられる. かみ合わせ継手 帯鋼板 モルタル 等辺山形鋼 既設RC柱 弾性 (ゴム)材 かみ合わせ継手 帯鋼板 モルタル 等辺山形鋼 既設RC柱 弾性 (ゴム)材 図-1 補強概念図