要旨ガス産生性肝膿瘍は致死率の高い疾患である。起因菌はKlebsiella pneumoniaeが主体であるが, 稀にC. perfringensによるものがある。急性胆嚢炎に伴いC. perfringensによるガス産生性肝膿瘍を発症し, 敗血症となりDICを合併したが, 救命し得た1例を経験したので報告する。症例は83歳の男性で, 腹痛と発熱を主訴として受診した。来院時,白血球増多と肝逸脱酵素の上昇および黄疸を認めるとともに, 低酸素血症を認めた。線溶系も亢進しており,画像上は,胆嚢頚部に胆石嵌頓が疑われるとともに, 肝右葉に内部不均一なガスを伴う膿瘍形成を認め,門脈ガス血症も伴っていた。急性胆嚢炎に伴うガス産生性肝膿瘍と診断した。カルバペネム系の抗菌薬投与を含む全身的なケアを行い,第10病日に開腹下膿瘍ドレナージおよび胆嚢摘出術を施行した。術後は順調に経過し,第65病日に自宅退院となった。C. perfringensによるガス産生性肝膿瘍は, 高齢者に多くみられる非外傷性の深部組織の感染症で, しかも進行が早いことから救命が難しい病態である。しかし, 画像診断の活用が救急外来においてもさらに進むことにより, 早期に診断される例も増加すると考えられる。今後, 救命への手がかりが蓄積して系統的なアプローチが整備されることが期待される。