“…従来の加工法では不可能な三次元複雑形状の造形を可能 とした [1][2][3][4] 。積層造形技術を用いた材料の造形プロセスは, 3D プリンティングやアディティブ・マニュファクチャリ ング(Additive Manufacturing)と称される場合も多い 3) 。金 属材料に適用される積層造形技術で最も汎用的なプロセ スのひとつは,レーザ粉末床溶融結合(Laser Powder Bed Fusion: L-PBF)法 [1][2][3][4][5] である。不活性ガス雰囲気中のチャ ンバー内に敷設した金属粉末を 1 層ずつ積層し,造形部に レーザ照射し溶融・凝固を繰り返し,構造体を造形する。 この L-PBF プロセスは鉄鋼材料の複雑形状部材の造形を可 能とし,軽量構造部材だけでなくプレス・射出成形用の金 型等への適用が期待されている。鉄鋼材料の合金粉末を用 いた L-PBF プロセス [6][7][8] は SUS316L 9,10) ,SUS304L 10) やマル エージング鋼 11,12) にて多く報告されているが,近年では二 相ステンレス鋼 13) ,17-4PH 14) (SUS630 相当) ,工具鋼 15) や 高強度鋼 16) など幅広い材料への適用が報告されている。 これまで,任意の形状を有するマルエージング鋼金型 の L-PBF 法を用いた積層造形の実現を見据え,緻密な造形 体作製に最適なレーザ条件の探索を目的とし,マルエー ジング鋼造形体の相対密度に及ぼす L-PBF プロセス条件 (レーザ出力 P とレーザ走査速度 v)の影響を系統的に調査 した 17) 。その結果,一般に用いられる体積エネルギー密度 (Volumetric energy density) 18) より,材料中の熱拡散長を考 慮した Deposited energy density 19) に基づく P と v の整理が, マルエージング鋼造形体の緻密化に有効であることを見出 した 17) 。この整理は,アルミニウム合金等の他の金属材料 にも有効であることが検証されている 20,21) 。L-PBF プロセ スにおける最適条件の探索は,99%以上の相対密度を持つ マルエージング鋼造形体の製造可能な P と v の範囲を同定 した 17) 。異なる条件(P,v)で造形したマルエージング鋼の 組織を予備的に調査した結果,いずれの造形体もマルテン サイト組織内部に微細な残留オーステナイト(γ)相が存在 することを明らかにした 22) 。これは,他の研究報告 23,24) と 一致する。また,残留 γ 相の体積率は,P と v によって変化 することも見出した。この L-PBF プロセス条件による残留 γ 相の変化は,その後の熱処理に伴うオーステナイト逆変 態に大きく影響を及ぼすと考えられ,プロセスを利用した 逆変態制御によるマルエージング鋼造形体の高強度・高延 性化 25) が期待される。これまで,L-PBF プロセスによるマ ルエージング鋼積層造形体の微細な金属間化合物相の析出 11,26,27) や熱処理に伴う機械的性質の変化 11,12,25,28) に関する研 究報告は多いが,オ...…”