要旨 シートベルトによる鈍的腹部大動脈損傷(BAAI)は死亡率が高く,また,見逃されやすい。今回,シートベルトにより生じたと考えられるBAAIを2例経験した。症例1:30才男性,ガードレールに衝突し受傷した。シートベルト痕,腸間膜損傷,第2腰椎骨折,BAAIを認め,腸間膜損傷に対し開腹止血術を施行,BAAIについては第9病日にステントグラフト内挿術を施行した。症例2:77才女性,ガードレールに衝突し受傷した。シートベルト痕,肝損傷,膵損傷,小腸損傷,腰椎骨折,BAAIを認めた。ガーゼパッキングと小腸穿孔部の縫合を行い,BAAIは保存的に管理した。いずれの症例もCTでシートベルト痕と思われる 皮下組織の濃度上昇,腹腔内臓器損傷,腰椎骨折を認め,ともに第2/3腰椎椎間板高位でのBAAIを認めた。シートベルト痕,腸管・腸間膜損傷,腰椎骨折を3徴とするシートベルト症候群ではBAAIを考慮した画像評価を行う必要があること,シートベルトによるBAAIは第2–3腰椎高位が好発部位であることが示唆された。