“…岩瀬 祥一 * † , 三浦 靖 ** , 小林 昭一 ** (原稿受理:2005年11月2日) [2][3][4] , 混捏時の 攪拌子の回転軸に掛かるトルクを測定するミキソグラフ [5][6][7] , 生地の伸展性を評価するエクステンシグラフ 8,9) などが従来 から用いられてきた.しかし,これらの試験機は,その測定 値が装置固有のものであるばかりでなく,パン生地の力学的 挙動を詳細に解析するためには十分な情報を与えず,パン生 地の工程管理に直接に測定値を用いるのには不十分であっ た. 10) 近年では,微小な正弦応力または正弦ひずみを種々の 周波数で試料に負荷し,ひずみまたは応力を測定する動的粘 弾性測定が多く用いられるようになった. [11][12][13] また,力学特 性を測定する以外にも生地の膨張力や二酸化炭素ガス発生 量を測定する方法などもある. 14,15) さらに,電磁気学的特性 である誘電率を計測することで,ガス発生量を測定したり 16) , パン生地の水分含量などの配合条件とガラス転移温度の変 化との関連性 17) を検討するなど,誘電特性を食品の計測に利 用する動きがある. 18) しかし,混捏や発酵の操作終点の判断 をいまだに目視で行うという伝統的あるいは職人的な技法 の占める割合が依然として大きい.また,多くの試験機が開 発され,そして数多くの理化学的測定が行われているにもか かわらず,小麦粉生地が複雑な多成分の不均一混合系である ために,小麦粉製品の生地物性と製品特性との関連性は十分 に解明されていない.最近では,タンパク質-ラウリル硫酸ナ トリウム(SDS)沈降法により食パンのローフ体積を予測す ること 19,20) や,ミキソグラフを用いて食パンのローフ体積を 予測する手法 21,22) が報告されている.ところが,SDS沈降法 は測定時間が長く,しかも熟練が必要であるために誰しもが 一定の値を取得しにくい.また,パン生地のミキソグラムと ローフ体積との決定係数 (R 2 = 0.51または0.65) が低かったり, 決定係数が高い場合は重回帰分析に用いる変数の独立性に ついて検討していない場合が多々見られた. 23 食パンの原材料には,一等強力小麦粉( 「イーグル」 ,Lot. 020327AE6,日本製粉㈱) ,食塩( 「塩」 , 塩事業センター) , グラニュー糖( 「テーブルシュガー」 ,日新製糖㈱) ,ショート ニング( 「ナチュラル・ショートニング」 ,月島食品工業㈱) , 脱脂粉乳(「ローヒート」,森永乳業㈱),ドライイースト ( 「saf-instant」 , S. I. Lesaffre社) , イースト ( 「Cオリエンタルフー ド」 ,組成:塩化アンモニウム20.0 (%, w/w),硫酸カルシウム20.0 (%, w/w),炭酸カルシウム10.0 (%, w/w),L-シスチン2.0 (%, w/w), α-アミラーゼ1.0 (%, w/w),プロテアーゼ1.0 (%, w/w),L-アス コルビン酸0.6 (%, w/w),その他に小麦粉,トウモロコシデン プン,NaCl,麦芽粉末が45 (%, w/w),オリエンタル酵母工業 ㈱) ,脱塩水を用いた.試料の被覆剤にはn-ヘキサデカン(特 級,和光純薬工業㈱) ,比重測定での媒体にはn-ヘキサン(一 級,和光純薬工業㈱)をそれぞれ用いた. 2次発酵開始時に9.8 %, (w/w)であったパン生地のマルトー ス含量は,2次発酵35分後または50分後に9.4 %, (w/w),そし て2次発酵95分後には7.7 %, (w/w)にまで減少した (Table V) . よって,マルトース発酵は2次発酵35∼50分間で開始したと考 えられる.また,小麦粉内在のβ -アミラーゼが至適pH 5.2 43) であることから,2次発酵35分後のパン生地(pH 5.17)と 50分後 (pH 5.06)のパン生地ではマルトース発酵によりマル トースが消費されるもののマルトースが生成されるために パン生地中のマルトース含量が減少しなかったのではない かと考えられる.一方,2次発酵時間が65分間を超えるとパ ン生地のマルトース含量が急激に減少したのは,小麦粉内 在の α-アミラーゼの至適pHが5.5 43) であることから,pH 4.95 Table V.…”