“…霊長類学における活動パターン研究の意義 現生の霊長類の活動パターンを分類群ごとに整理し ていくと,キツネザル下目を除く曲鼻猿亜目,すなわ ちロリス下目は夜行性であり,直鼻猿亜目はメガネザ ル下目と広鼻猿下目のヨザル属(Aotus)以外は昼行性 である (Griffin et al, 2012;Santini et al, 2015) 。霊長類 の共通祖先は夜行性であり,霊長類全体における進化 の流れとしては,夜行性から昼行性へと移行してきた と 考 え ら れ て い る (Griffin et al, 2012;Santini et al, 2015) 。霊長類における昼行性化は,群れや複雑な社会 性の進化を伴い (Shultz et al, 2011) ,視覚や脳の発達に もつながる一大イベントであったと考えられる (Barton, 1998) 。よって,霊長類における活動パターンの進化は 霊 長 類 学 の メ イ ン ト ピ ッ ク の ひ と つ に な っ て き た (Heesy & Ross, 2001;Martin, 1990;Martin et al, 2003) (Tattersall, 1979) 。やはり夜行性とも昼行 性とも適用しがたかったために,Tattersall(1987はギ リシャ語の"Kata(= Through) " と"Hemera(= Day) " を用いて"Cathemerality"という言葉を考案し,今日ま で使用されている。日本語では小山・高畑 ( 33:3 − 20, 2017(doi:10.2354 / psj.33.003) (Tattersall, 1987) Fernandez-Duque, 2003;A. trivirgatus Wright, 1989) 。曲鼻 猿亜目では既述の 3 属だけでなく,近年ではジェント ルキツネザル属に近縁なオオジェントルキツネザル属 (Prolemur)が周日行性に位置づけられた (Curtis, 2006;Curtis & Rasmussen, 2006) 。さらに,厳格な昼行性であ ると定義されていたワオキツネザル(Lemur catta)でも 夜間活動が確認されおり (Donati et al, 2013;LaFleur et al, 2014;Parga, 2011) Curtis et al, 1999;Rasmussen, 1999Rasmussen, , 2005Tattersall, 1987) (Rasmussen, 1999(Rasmussen, , 2005Tarnaud, 2006) 。雨季と乾季が明瞭な熱帯乾燥林に みられる。 C タイプ:1 年を通して昼も夜も活動する恒常的な周日 行性を示す (Colquhoun, 1998;Donati & Borgognini-Tarli, 2006;Schwitzer et al, 2007a) 。季節が不明瞭な熱帯雨林 にみられる。 これらの共通点や差異を生じさせる至近要因と究極 要因については,後ほど触れていく。 2. 周日行性は昼行性化の途中か? 霊長類の共通祖先が夜行性であることは長らく主張 されており,近年の研究においても強く支持されてい る (Griffin et al, 2012;Santini et al, 2015) 。我々ヒトを 含め,直鼻猿亜目のほとんどは昼行性であることから, 霊長類は夜行性から昼行性に進化してきたといえる (Santini et al, 2015) 。一方,原始的...…”