“…本研究 で は, 新型コ ロナウ イルス 感染症 ( 以下, CO VID -1 9 と する) の 大流 行時の 人 間 の心的傾向の平時と比較した変化を,感染を忌避する傾向を対象として,異なる調査媒体 ( W e b 調査 会 社と ク ラウ ド ソー シ ング サ ービ ス )で 実 施さ れ た, 異 なる サ ンプ ル によ る W e b 調 査デ ー タに よ って 検 証す る 。 そ の 際, 異 なる 調 査媒 体 での 実 施が デ ータ に 与え る 影響を考慮し,傾向スコアを用いた逆確率重み付け推定法によってその調整を試みる。 感染禍という自然実験 2 0 2 0 年 1 月 以来 のC O VID -1 9 の大 流行 は, 単なる 伝染 病の 域を 超え, きわ めて 大き な 社会的影響を世界中にもたらした 。こうした状況を,自然実験( Natural ex per iment)という観点から捉える言説がある(e.g Halperin, 2020;Islam et al, 2020;Thomson,. 年 1 1 月 から 感 染禍 中 の3 回 にわ た る 縦断 調 査に よ り新 奇 性探 求 とメ ン タル ヘ ルス の個人内変化を検討したLi, Yu, Miller, Yand, & Rouen(2020感染禍にクラウドソーシングサービス(以下,クラウ ド と す る) で実 施 し た調 査 デー タと , そ の後 に 入手 でき た , 平時 に W e b調 査 会社 (以 比較し,教示文や調査項目を精読せずに回答するSat isf ic e傾向にH Eが見られることを示 している。また,三浦(2 0 20 ) は同様の試みを調査会社2 社とクラウド 1 社 を対象に行って 回答者 の個 人属 性や 特性, S a t is f i c e 傾向 を比較 し, 調査 会社 間には あま り差 がな い一方 で,クラウドと調査会社には異なる傾向があることを見いだしている。しかし,これらの 研究は,HEの存在を示している一方で,その調整は行っていない。 本研究では,傾向スコアによるマッチングによって調査媒体によるHE の 調整 を試みる。 傾向ス コア マッ チン グは, 医学 や経 済学 など無 作為 割り 当て を伴う 実験 ( R CT ) )にのみ依存し,結果変数には依存し ないと仮定して,因果効果を推定することを試みる(星野, 2009, p. 43)。中でも,傾向 スコアの逆数をサンプルの重み付け値として利用した調整を行った上で因果効果を推定す るのが逆確率重み付き推定(Inverse Probability Weighting: 以下,IPWとする) である。I P W はご く シ ンプ ル な統 計 量 であ る 一 方 で, こ れ で重 み づ け た集 団 平 均値 の 差 は 因果 効 果の不偏推定量だということがわかっている(星野, 2009, p.70は ,有意抽出標本 による オンライン調査 データ を確率抽出標本 によ る訪問調査と比較するために傾向スコアを用いた調整を行う場面で,有効な共変量選択の ため の4 つの 基準 を 挙 げて いる 。 そ のう ち の1 つが 「個 人内 変 動 が少 なく (つ まり 各 個人 内で安定した),かつインターネット調査と訪問調査で継続的に質問できる可能性が大き い項 目 を選 ぶ 」で あ る。 本 研究 の 対象 デ ータ は いず れ も有 意 抽出 の W e b 調 査で , は,CO VID -1 9感染 禍と平時と で人心 が異 なるかどう かを推 定す る た めに ,そ れぞ れ の時 期で 収集 され た 2 つの デー タを 比較 す る。 その 際, 2 つ が 調 査会 社とクラウドという異なる調査媒体から得られたものであること(HE )との交絡が存在 する こ と を考 慮 し て ,傾 向 ス コア に 基 づ く IP W に よ る 調整 を 行う 。 調 整の 際 に 用 いる 共 変量は,両方のデータに含まれる個人属性やそれに類する個人差変数とする。なお,調査 時期と調査媒体の交互作用はないという仮定をおく。つまり,調査時期の影響が調査媒体 により異なるとは考えない。 感染を避けたいという心的傾向 本研究で CO VID -1 9 感染禍が もたら す影響 を検討す る変数 は,感 染を避け たいと いう 心的傾向) 。この研究を 引用した 論文は2 0 2 1 年 8 月 2 4 日現在1 0 本 あり,そ のうち4本で平時と感染禍の感染忌避傾向が比較されている。Stevenson et al(2021)と同 様の結果が示されたものが多い( Boggs, Ruisch, & Fazio, in press; Hromatko, Grus, & Kolđeraj, 2021 ; Karlsson et al, in press) が,パネル調査によるもの,異なるサンプル を用いたもの,感染禍に平時を回顧させたものなど比較対象やその分析手続きは様々であ る。また,異なる3 つの方法 (感染源を想定させうる写真刺激の嫌悪感の評定,三領域嫌 悪感尺度(Three functional Domains of Disgust Scale: TDDS)(Tybur, Lieberman, & Griskevic ius, 2009) の道徳的嫌悪と病原体嫌悪,Padua I nvent oryの汚染感受性サブス ケール( Burns, Keortge, Formea,& Sternberger, 1996)による測定を行ったMiłkowska, Galbarczyk, Mijas, & Jasienska(2021)では,写真刺激の嫌悪感評定と汚染感受性は感染…”