1. 緒言 鋼の大型 IC や連鋳鋳片に見られるマクロ偏析は古くか ら製品品質に直結する重大な問題として,生成機構にかか わる研究開発は精力的に行われてきた 1-10) 。それらの成果 により,品質レベルは格段に向上したと考えられる。しか し,近年の鋼材の高級化志向,あるいは品質要求レベルの 厳格化のために従来は問題とならなかった軽微な偏析が問 題点として顕在化される 11) など,偏析問題は今日でも重要 な解決すべき問題点と考えられている。マクロ偏析低減技 術の考え方のひとつに,凝固組織制御によるマクロ偏析改 善 12-14) ,というものが挙げられる。それは主として等軸晶 化によるものであり,鋳片断面の中に占める等軸晶領域の 割合である,等軸晶率を用いて整理され,製造現場におい ても管理されている。しかし,等軸晶の粒径やその形態が どのように影響するかについてはほとんど検討されていな い。そこで本研究では等軸晶率ではなく,等軸晶径やその 形態のマクロ偏析に対する影響を解明することを最終目標 とし,第一段階としてできるだけ単純な形の鋳片を鋳造す る小型実験において,マクロ偏析の再現を試みた。 小型実験でのマクロ偏析再現による生成メカニズムの解 明についてはいくつかの報告例がある 15-20) 。マクロ偏析生 成には凝固の末期に溶質を濃縮した液相が樹間を流動する 必要があることから,鋳型形状に工夫を凝らしたものが多 い。そのため,得られる鋳片は断面積が大きく異なるもの, テーパーが強くついているものなど,形状が複雑であり, マクロ偏析モデル解析までを展望すると困難が予想され る。したがって,鋳片形状はできるだけ単純であることが 望ましい。また,凝固組織制御によるマクロ偏析低減の可 能性を検討するためには,凝固組織をある範囲にわたって 制御する必要があるが,溶鋼を用いた小型実験ではその実 施は困難である。そこで,Ti-B 系の凝固組織微細化剤 21) の 存在が知られている Al 合金に着目した。先行研究では Al 合金を用いてマクロ偏析の生成を実験的に解析した例もあ るため 22,23) ,鋼の凝固の際に生起するマクロ偏析を解析す るための代替材料として適していると判断できる。そこで 本報告では Al 合金を用いた小型実験によるマクロ偏析の 再現について述べる。 2. 実験方法 鋳片全体としては単純な直方体とし,鋳型の一部に局所 論 文 アルミ合金を用いた小型実験でのマクロ偏析の解析 佐藤 文人 1) ・江阪 久雄 2) * ・篠塚 計 2)Synopsis : Macrosegregation is directly related to the performance of steel products. So many research works have been performed to tackle this problem. Quality of steel products have been increased remarkably, though, we have still some problems of macrosegregation. In this study, in order to investigate the relationship between solidified structure and macrosegregation, model experiments using Al-10 mass%Cu alloy have been carried out. A mold, which can form macrosegregation in the central region of the small ingot, has been newly developed. About 520 g of Al-10 mass%Cu alloy was used for experiment, changing casting temperature ranged from 650 ºC to 850 ºC. Areal fraction of eutectic structure was characterized for macrosegregation. When this value exceeded 0.23, which was evaluated using Scheil equation, it was defined that macrosegregation formed in the solidified shell. Primary crystals bridged together and free liquid flow was prevented near the chill plate. Therefore, the negative pressure increased and relatively high suction force acted through the mushy zone near the chill plates. Thus, remained liquid in the interdendritic region, which had high solute content, flew into the bottom area. After complete solidification, there remained large shrinkage and macrosegregation below the chill plated region. On the other hand, near or above the chill plate region, negative segregation and/or small porosity formed.