要旨症例は54歳の男性。基礎疾患に大腸Crohn病と難治性痔瘻があり,ステロイド内服治療を受けていた。左大腿部の腫脹と疼痛を主訴に近医を受診したところ,CT検査で同部位にガス像を伴う膿瘍を認めたため,チューブドレナージを施行し,二次医療機関へ転院搬送された。同病院で,チューブドレナージの継続と抗菌薬投与が行われたが,膿瘍のさらなる進展を認めたため,当センターへ再転院搬送となった。当院来院時,急性期DIC診断基準スコア5点,acute physiology and chronic health evaluation(以下APACHE)IIスコア17点であった。CT検査では,S状結腸に後腹膜への穿通を疑う所見を2か所認め,左腸腰筋から骨盤腔,左大腿,左下腿の広範にガス像を伴う膿瘍腔を認めた。DICを合併した重症敗血症であり,緊急開腹ドレナージと横行結腸人工肛門造設術,左下肢開放ドレナージ術を直ちに行った。出血傾向を認めたため,S状結腸穿通部に対しては全身状態の改善した入院3日目にS状結腸切除術を実施した。その後は下肢の開放ドレナージを継続し,入院13,22日目に創部の一部縫合と植皮を行い,同40日目にリハビリテーション目的で転院となった。大腸Crohn病の後腹膜穿通により,骨盤腔から下腿に至る広範な膿瘍を形成した例は稀であり報告する。
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