要旨
【目的】尿路感染症と診断された救急搬送患者の重症化の予測のため,菌血症および敗血症性ショックを早期に予測するツールを明らかにする。【方法】2019年4月1日から2021年4月29日までに勤医協中央病院に救急搬送後,尿路感染症の診断で尿,血液培養後に抗菌薬の投与を受けた348例を菌血症/非菌血症群,敗血症性ショック/非ショック群に分け,患者背景,搬送までの日数,血中乳酸値,SIRSクライテリアおよびqSOFAを比較し,有意差を認めたツールの精度を検討した。【結果】菌血症および敗血症性ショックごとに合併の有無で分けた2群間の比較で有意差を認めたSIRS,qSOFAおよび血中乳酸値の早期予測能を検討した。菌血症の感度はSIRSが最も高く(97.8%),area under the curve(AUC)77%,至適cut–off値の感度84%と識別能も最も高かった。敗血症性ショックではSIRSの感度が100%と最も高かったが,AUCは最も低く,識別能では乳酸がAUC 86%,至適cut–off値での感度82%と最も高かった。qSOFAは感度が低く,敗血症性ショックの識別能ではSIRSとほぼ同等であった。【結論】救急搬送された尿路感染症におけるSIRSは感度,識別能の高さからqSOFA,乳酸値より優れた早期予測因子であった。敗血症性ショックの識別能は乳酸が最も高かった。
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