要旨症例は56歳の女性で,ショック状態のため,他院から紹介となる。初期輸液やカテコラミンに反応せず,一時心肺停止になった。蘇生後もショック状態を認め,Direct hemoperfusion with polymyxin B immobilized fiberを導入した。CT検査上,腹水と腸管壁の肥厚を認めたため,診断的腹腔洗浄を行った。白色に混濁した腹水を認め,緊急手術を施行した。膿性混濁腹水と子宮に膿苔を認めたが,腸管穿孔は認めなか ったため,腹腔内を洗浄後,持続灌流洗浄を開始し集中治療を継続した。血液,腹水培養検査上,Streptococcus pyogenesを検出し,Streptococcal Toxic Shock Syndrome(STSS)の診断基準を満たした。その後,徐々に状態は安定し,16病日に一般病棟に転棟した。本症例はAcute Physiology and Chronic Health Evaluation II score 49点,Sequential Organ Failure Assessment score 18点であった。Streptococcus pyogenesによる原発性腹膜炎は稀な疾患であるが,STSSを発症すると急激に悪化し心停止にもなる重篤な疾患である。救命のためには,早期診断,迅速な外科的治療および適切な集中治療が必要であると考えられた。
要旨【背景】Open abdomen management(OAM)は,重症外傷のみならず重症腹膜炎などの疾病患者にも応用され,OAMの適応は近年大きく拡大してきている。一時的閉腹法は種々の方法があるが,本邦における一時的閉腹法の治療戦略やOAMの筋膜閉鎖率,瘻孔形成などの合併症発生率,死亡率などについて,まとまった報告はない。【目的】OAMの現状を多施設で調査し,一時的閉腹方法や筋膜閉鎖率,死亡率を検討すること。【対象と方法】2012年4月から2014年3月までに,近畿8施設でOAMが行われた18歳以上の患者を対象とし,調査シートを用いた後ろ向き研究を行った。【結果】対象となった症例は99例であった。外傷が33例,疾病が66例であった。疾病では,腸管虚血,腹膜炎の適応が最も多かった。筋膜閉鎖は77例(77.8%)が可能であり,全体の死亡率は29.3%(n=29)であった。筋膜閉鎖可能症例と筋膜閉鎖不可能症例では,死亡率に有意な差を認めた(19.5% vs. 63.6%, p < 0.01)。また,一時的閉腹法は,全症例で局所陰圧療法が施行され,vacuum pack closure(VPC)が最多であった。筋膜閉鎖が3日以内で可能であった症例は51例であり,筋膜閉鎖不可能症例の5例(22.7%)で腸瘻を認めた。【結語】筋膜閉鎖不能症例は予後が不良であった。今回の検討では,VPCを用いた過去の報告と比較しても,高い筋膜閉鎖率が達成できていた。
scite is a Brooklyn-based organization that helps researchers better discover and understand research articles through Smart Citations–citations that display the context of the citation and describe whether the article provides supporting or contrasting evidence. scite is used by students and researchers from around the world and is funded in part by the National Science Foundation and the National Institute on Drug Abuse of the National Institutes of Health.