要旨超音波装置の小型化とベッドサイドへの普及により,超音波検査は救急現場で積極的に利用されるようになった。医療従事者がベッドサイドで観察範囲を絞り,臨床決断と侵襲的手技の質向上のために実施する超音波検査はpoint–of–care ultrasonography(POCUS)と呼ばれる。その概念は世界中で広く共有されるようになったが,本邦ではfocused assessment with sonography for trauma(FAST)と超音波ガイド下中心静脈穿刺を除き,POCUSに関する正式な指針はこれまで存在しなかった。日本救急医学会Point–of–Care超音波推進委員会では,POCUSを用いた救急診療の質向上について議論を繰り返し,日本救急医学会からの認証を得て救急point–of–care超音波診療指針としてまとめた。この指針では,背景,救急科専門医の到達 目標,その論文的根拠,領域横断的な活用について述べる。到達目標の主要項目には,超音波の基礎,上気道,胸部,心臓,腹部,深部静脈,ガイド下手技,症候別評価が含まれる。また将来主要項目になる可能性があるものは付加項目として広く言及した。この指針は救急科専門医にとっての超音波検査の概要と方向性を示すものであり,救急超音波教育のために利用できる。この指針をきっかけに,本邦の救急診療の現場で超音波検査が効果的に利用されることを願う。
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