要旨 症例は83歳の男性。発熱,呼吸困難,血圧低下で救急搬送となり,化膿性椎間板炎および腸腰筋膿瘍,敗血症性ショックの診断で,腸腰筋膿瘍に対して経皮的穿刺ドレナージ後にICU入室となった。血液培養からはMethicillin resistant staphylococcus aureus(MRSA)が検出され,全身に多発膿瘍形成を認めた。バンコマイシンを長期間投与する方針とし,洗浄ドレナージを追加した。第9病日に血液培養は陰性化したが,第18病日に発熱,拡大する紅斑,好酸球増多,腎機能障害,肝機能障害が出現し,循環動態の悪化および炎症所見が増悪した。敗血症の二次感染を疑い加療したが状態は改善せず,RegiSCARスコアよりDrug reaction with eosinophilia and systemic symptoms(DRESS)と診断した。被疑薬である抗菌薬を中止し,ステロイド投与により循環動態は安定し,発熱,紅斑,好酸球増多,腎機能障害,肝機能障害は改善した。本症例は敗血症の二次感染との鑑別に難渋し,敗血症診療のピットフォールであると考えられた。