“…電子ビームリソグラフィ(EBL)は ,最小ビーム径 2 nm 程度の電子ビームを走査してレジストを露光するリソ グラフィ技術の一つである.ナノスケールの微細加工を可能とするため,主に電子回路の集積化など半導体分野 で発展し,現在では光学デバイス (Tanaka et al, 2016)や量子デバイス (Kato et al, 2021;Houck et al, 2021;Adachi et al, 2023) ,バイオチップ (Taniguchi et al, 2020)など様々な分野で用いられている.EBL で作製したレジストパ ターンの多くは後工程でエッチングやリフトオフのマスクとして利用され,露光上面から 2 次元的に観察したと きに所望の線幅やホール径を有しているかを重要としてきた. 近年の高ビーム強度あるいは高加速電圧の EBL 装置によって, 比較的厚膜のレジストを用いた精細なパターニ ングが可能となり,そのようなレジストパターンをナノインプリントのモールドやナノトランスファプリントの スタンプの原型として利用することで,EBL で作製しなければ到達できないナノスケールのパターンを高スルー プットに複製する手法が試みられている (Taniguchi and Goto, 2018;Barcelo et al, 2016;Oh et al, 2021) .特にナノイ ンプリントモールドの作製において,その側壁傾斜角が形状精度や歩留まりに影響を及ぼすことが示されている (Sung et al, 2010;Fang et al, 2014) .例えば,モールドの離型性は,その側壁角度と離型に要する力に強い相関が あり,傾斜角が 90˚から約 75˚まで減少するにつれて離型に要する力が減少する (Hirai et al, 2015) .ナノトラン スファプリントに用いるスタンプでも,側壁角度は転写する薄膜の離型性に重要と考えられる.そのため,それ らの原型となるレジストパターンはこれまで重要としてきた線幅やホール径などの 2 次元的な形状に加えて,断 面形状を含む 3 次元的な検討が必要と考えられる. EBL で得られるレジストパターンは,同一の露光パターンであっても,加速電圧,レジストの化学特性(コン トラスト) ,現像方法,およびドーズ量などで変化する.3 次元形状を作製するグレースケール EBL と呼ばれる 技術があり, ブレーズド形状や階段形状の作製が可能である (Grigaliūnas et al, 2016;Kirchner and Schift, 2019;Chen et al, 2020;Mortelmans et al, 2020)…”