“…。一方で,性差を示唆した研究も存在した。 例えば,女子は男子より身体不満足感が強いと報告さ れていた (Wood et al, 1996) 。また,女子は男子よりやせ 願望が強く,ダイエットについて考えることが多いと の報告もあった(伊藤他, Phares et al, 2004) 。さらに, 女子はやせたいと望むのに対して,男子はたくましく なりたいと望むという報告や (Cohane & Pope, 2001) ,女 子はやせを志向するが,男子はやせとたくましさの両 方を志向するという報告もある(McCabe & Ricciardelli, 2005) 。このように,児童のボディイメージ研究におけ る性差の報告は,一貫していないようである。そこで 本研究では,性別に分析を行うことで,性差の有無に ついても検討することとする。 ポジティブボディイメージという視点 ここ数十年で,ポジティブ心理学は目覚ましい発展 をとげてきた。ポジティブ心理学とは,悪い面の修復 にとらわれていた従来の心理学を, 良い面をも補強す る心理学に変えることを目的とした心理学の一分野で ある (Seligman, 2002) 。ポジティブ心理学の影響はボ ディイメージの研究領域にも波及しており,従来の研 究において病理中心の研究が多く,ネガティブボディ イメージばかりに焦点が当てられてきたこと (Cash, 2002) (Tylka & Wood-Barcalow, 2015) 。 児童を対象とした研究においても,身体尊重に着目 することは有効と考えられる。なぜなら,身体尊重は, 児童において,自尊心や人生満足度と正の関連をもち (Namatame et al, 2020) ,メディアイメージの内在化やメ ディアからのプレッシャー,ネガティブ感情と負の関 連をもつと示唆されているからである (Halliwell et al, 2017) 。このような背景から,近年の文献展望にて,児 童の身体尊重を育むための介入研究が期待されはじめ ている (Halliwell, 2015) 。また,児童期に予防的に介入す る必要性が指摘されており (McCabe et al, 2006) ,児童に 対する支援が求められている。したがって,児童を対 象とした身体尊重への介入プログラムを開発する必要 があると考えられる。 児童の身体尊重を育む介入法 身体尊重を育む介入法についての研究は,青年や成 人を対象としたものがほとんどであり(e.g., Albertson et al, 2015) ,児童を対象とした研究報告は,限られてい る。著者の知る限りでは,児童を対象として,介入に よって身体尊重が高まったことを報告した論文は Halliwell et al (2018) のみである。Halliwell et al (2018) は,自己受容や心と身体のつながりを促進することで (Neumark-Sztainer, 2014) ,身体尊重を促進すると考えられ るヨガ (Piran, 2015) (Cash, 2002;Cash et al, 2004; い(e.g., Bird et al, 2013;Halliwell et al, 2016;Hinz, 2017;Kater et al, 2002;McCabe et al, 2017)が扱われることが多かっ た。これらは,ネガティブな影響を低減させることに 焦点を当てている。一方で,ポジティブ心理学の領域 では,self-compassion(以下,自己への思いやりとする)や 感謝などのポジティブな側面に焦点をあてた研究が蓄積 されてきた(e.g., Guest et al, 2019;Wolfe & Patterson, 2017) et al, 2015) 。 感謝とは,気質レベルにおいては,世界のポジティ ブな物事や側面に気づき,認めることへの習慣的な姿 勢と定義されている (Wood et al, 2010) 。Homan & Tylka (1) =.06, p=.81) ,年 齢(t (150) =1.48, p=.14) ,BMI (t (150) =.56, p=.58)にお いて,介入群と統制群の間に有意差は認められなかっ た。また,身体尊重(t (145.88) =.02, p=. et al, 2003) 。また,Holt & Ricciardelli (2008) のレビュー論文の後に発表された...…”