“…血栓閉塞型AAAはAAA症例の0.6~2.8% 1), 2)であると報告され,文献では51例の報告がある 1), 2), 3), 4), 8)。平均年齢は64.7±7.9歳,高血圧,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患,末梢血管性疾患の既往症が多い。無症状で経過することもあるが,下肢や脊髄の虚血を発症すると死亡率は50%に上る。AAA内の壁在血栓が脱落してCIAの塞栓症を発症した場合は,下腹部全体の急性虚血により重篤な病態となる。一方,CIAやFAの血栓症の場合は,慢性の低灌流状態により側副血行路が発達し,下肢の虚血症状も比較的緩徐に進行することが多い 1), 2), 4), 5), 6)。本症例は,病理組織で粥状硬化性の血栓閉塞型AAAの状態が判明したことと術中所見から,右側は瘤内の壁在血栓が脱落してCIAの急性塞栓症を発症したと判断した。一方,左側はCIAの慢性動脈閉塞に血圧の低下が加わり一時的な下肢の虚血に陥っていたと判断した。…”