“…et al, 2009;Oliver and Plummer, 2011),重心速度の減速量が大きいこと (綿 谷,2016) が報告されている.ウィンドミル投法における踏込脚は,身体を支えること(Guido et al, 2009; Werner et al, 2005;Oliver and Plummer, 2011) やエネルギーフロー(Oliver et al, 2021) を促すうえで重要な役割を担っている可能性が指摘されているものの, 力学量を用いた定量的・統計的な検証は少ない.一方,野球投手における投球では,踏込脚 は身体の制御・固定を行うとともに骨盤や体幹,上肢の運動に作用すること(蔭山ほか, 2015b;Ramsey and Crotin, 2016;Ramsey et al, 2014; 島田ほか,2000; Solomito et al, 2020),さらに投球スピードの高い投手ほど踏込脚による減速力積が大きく (蔭山ほか, 2015a),踏込脚による減速成分の地面反力が大きいことが骨盤,体幹,上肢へのエネルギー フローを促すこと (Howenstein et al, 2020) が定量的に報告されている.また,投球では ないが,ウィンドミル投法と同様に踏込脚が先行するサッカーのインステップキックにお 早期公開 いても,踏込脚は身体を支持し安定性を確保するとともに,蹴り脚の足部速度を増大させる 役割のあることが報告されている (福井ほか,2007; Inoue et al, 2014; イクル (Stretch-Shortening Cycle: SSC) 運動 (Bobbert, 1990; 深代,2000; Komi, 2000) .6±1.1 歳,身長:1.69±0.05 m,体重:66.11±3.80 kg,競技歴:10.29±1.91 年.73-74) に則り,事前に女子ソフトボール選手 10 名(年齢: 20.0±0.9 歳,身長:1.60±0.05 m,体重:57.8±4.26 ㎏)を対象に調査した縦 61.7 cm×横 43.2 cm の長方形(地面から中心までの高さ:72.1 cm)とした.ストライクゾーンの横幅 Movement Jump: CMJ),立幅跳 (Standing Long Jump: SLJ),リバウンドジャ ンプ (Rebound Jump: RJ),そして,ウィンドミル投法を模擬した 1 歩助走付き片脚鉛直 ジャンプ (one-step Approach single-leg Vertical Jump: AVJ) 4 以上の試技が 2 回以上得 られない場合は試技を追加し,これらの条件を満たした試技を成功試技とした.分析試技は, 成功試技の中から CMJ においては跳躍高,SLJ においては跳躍距離, RJ においては RJ-index,AVJ は踏切離地時の鉛直重心速度が最も高かった試技とした(いずれも後述の「算 早期公開 出項目」において説明) . 2.2 測定方法 投球および AVJ において,赤外線カメラ 10 台 (Vicon Motion Systems 社製,Vicon Vantage+) を用いて身体計測点 47 点およびボール計測点 2 点の三次元座標データを 250 Hz で収集した. また,全ての試技において地面反力をフォースプレートにより 1,000 Hz で 計測し,各センサ出力を A/D 変換ボードによってコンピュータに取り込んだ.静止座標系 は,投球方向を Y 成分,Y 成分に対して水平左右方向を X 成分,鉛直上下方向を Z 成分と 定義した. 3.算出項目および算出方法 投球と AVJ においては,運動自由度を 3 として,14 の関節によって連結された 15 の剛 体セグメントモデルを用いて全身をモデル化した.身体計測点 47 点およびボール計測点 2 点に関しては,Wells and Winter (1980) の方法を用いて身体各部の分析点毎に最適遮断周 波数 (5-35 Hz) を決定し,4 次の位相ずれのない Butterworth digital filter による平滑 index は, 跳躍高を踏切時間で除すことで算出した (図子ほか,1993; 遠藤ほか,2007).AVJ におい ては踏切離地時の身体重心の鉛直速度 (以下「AVJ の鉛直初速度」と略す) を算出した.ま た,踏切接地から離地までの間における鉛直地面反力のピーク値と力積,水平地面反力にお ける減速成分のピーク値と力積を算出した.なお,各種ジャンプ運動における接地および離 地の判定は Z 成分の地面反力の 10 N を基準とした. 4.統計処理 各変数は平均±標準偏差で示した.すべての統計処理については,SPSS (IBM 社製, Statistics Version 24) を用いた.相関係数は Pearson の方法を用いて算出し,有意性は危 険率を 5%未満で判定した.なお,相関関係の強さは Hopkins et al (2009) の基準を参考 に,相関係数の大きさから small (.1-.3) , moderate (.3-.5), large (.5-.7), very large (.7-.9) と判断した. Ⅲ 結果 表 1 には, 投球における投球スピードと重心速度および地面反力との相関関係を示した. 投球スピードとの間にはいずれも有意な相関関係は認められなかったが,効果量において は全ての変数において Large と,高い効果量が認められた.※ここに Table1 を挿入 表 2 には,投球における投球スピードと各種ジャンプ能力との相関関係を示した.投球 スピードとの間にはいずれも有意な相関関係は認められなかったが, 効果量においては, RJ の RJ-index および跳躍高それぞれにおいて Large と高い効果量が認められた.※ここに Table2 を挿入 表 3 には,投球における重心速度および踏込脚による各種地面反力と各種ジャンプ能力 との相関関係を示した.投球における重心速度との間には,SLJ の跳躍距離,RJ の RJ-早期公開 index と跳躍高それぞれにおいて有意な相関関係が認められ, いずれの効果量も Very Large であった.また,投球における各種地面反力との間にはいずれも有意な相関関係は認められ なかったが,鉛直力積および減速力積と AVJ の鉛直初速度との間には Large と高い効果量 が認められた.なお,本研究における AVJ は,踏込脚における動作特異性を反映した運動 であり,AVJ の踏切脚はウィンドミル投法における踏込脚と同じ脚であるため,AVJ の鉛 直初速度と軸脚の能力指標である重心速度との間の相関関係は検討しなかった.※ここに Table3 を挿入 表 4 には,投球と AVJ との間の相関関係を各種地面反力について示した.鉛直地面反力 の力積および水平地面反力の減速力積それぞれに有意な相関関係が認められ,いずれの効 果量も Very Large であった.また,有意な相関関係は認められなかったが,水平地面反力 における減速成分のピーク値は Large と高い効果量が認められた.※ここに Table4 を挿入 ジャンプ能力の関係性を検討したところ,SLJ の跳躍距離と RJ の RJ-index, 跳躍高にお いて有意な相関関係が認められ,CMJ の跳躍高においては認められなかった (Table3).ウ ィンドミル投法では,上体の前傾と下肢関節の屈曲の後に下肢 3 関節の爆発的な伸展が生 じている. このような動作特性は SLJ だけでなく CMJ においても類似していることから, CMJ の能力も重心速度の獲得に影響している可能性があったが,本研究の結果はこれと異 なっていた.一方で,軸脚によるキック動作によって高い重心速度を獲得するためには,膝 関節ではなく股関節による伸展動作が重要になることが報告されている (綿谷,2018).ま た,SLJ は跳躍方向の調整(水平速度の獲得)のために,鉛直方向への CMJ よりも膝関節 の貢献度が低く股関節の貢献度が高いこと (Robertson and Fleming, 1987; 鳥海ほか, 2004) が報告されている.これらのことから判断すると,ウィンドミル投法における軸脚の キック動作は,跳躍方向の相違が影響して CMJ よりも SLJ における踏切脚の踏切動作に より類似しており,このことが SLJ においてのみ有意な相関関係が認められた要因と考え られる.一方で,軸脚による重心速度との間には RJ の RJ-index と跳躍高においても有意 な相関関係が認められた (Table3).RJ の踏...…”