“…Baddeley の提唱した実行系機能(executive function)と いう説明概念は、記憶だけにとどまらず、複雑な認知 処理過程を総称するものとして神経心理学分野でも重 宝 さ れ て き た (Baddeley, 2012;Hoffmann, Schmeichel, & Baddeley, 2012) 。その定義は研究者によって若干異なる が、簡単に言えば、目的志向的で意識的でない自動的な 行動の開始・維持・抑止に関係する処理過程のことであり、 脳幹部、皮質下、皮質のネットワークを介して意図や情 動に基づいて形成された行動プログラム選択肢を、過去 経験や発達過程で学習した価値に基づいて評価し、行動 として実行・抑制・制止を決める仕組みである。その神 経基盤は人間での脳損傷や動物を対象とする研究から、 前頭前野眼窩部(orbitofrontal cortex) 、前頭前野内側部 (medial prefrontal cortex) 、 線状体(striatum) 、 側座核(nucleus accumbens) 、視床(thalamus)が対応する脳部位であると されている (Aron, Robbins, & Poldrack, 2004, 2014Curtis, & D'Esposito, 2003 (Burgess & Stuss, 2017;Lezak, 1983;Stuss, 2011;Welsh & Pennington, 1988 Cavalheiro, Centeno, & Yacibian, 2017;Fernandez, Asarnow, Narr, Subotnik, Kuppinger, Foreison, & Nuechiteriein, 2018;Kose, Ikenaga, Yamada, Morimura, Takeda, Omura, Tsuboi, Yamada, Kimura, Kiyonaga, Higaki, Tanaka, & Nakagawa, 2016) 3.1 方法…”