キーワード:非閉塞性腸管虚血,エリスロポエチン,エリスロポエチン抵抗性,動脈硬化,体液量 〈要旨〉 透析患者では,非閉塞性腸管虚血(NOMI)の発症頻度が高く予後不良である.NOMI の発症には直接的な誘因が 不明な場合も多い.これらの患者の臨床的特徴を明らかにし発症との関連を検討した.NOMI を発症した 19 例を, 直接的な誘因(心臓手術,心原性・出血性ショック)がある A 群(9 例)と,不明の B 群(10 例)に分けた.B 群 では APACHEⅡスコアが低値であったが,動脈硬化性疾患の既往が多い傾向にあり,死亡率は同等であった (A 群; 77.8%,B 群;60%,p =0.63) .また,エリスロポエチン(ESAs)使用量が多く(7,000 vs 3,000 U/週,p =0.015) , エリスロポエチン抵抗性指数も高い傾向にあった (12.9 vs 4.3 U/kg/g/dL, p=0.058) .さらに,発症時の体重減少, ヘマトクリットの上昇傾向がみられた.直接的な誘因がない NOMI 症例でも死亡率は高く,組織低灌流の素地に加 え,動脈硬化のみならず ESAs 投与量や抵抗性,循環血漿量減少および血液粘度上昇による腸管膜血流低下が NOMI 発症に関与する可能性が推察された.