“…Liu ら 39) は,投射粒子寸法が小さいほど処理時のひずみ 速度が高いため,低炭素鋼の結晶粒を微細させる効果が 高いことを明らかにしている.森田 26) は,被処理材に付 与される運動エネルギの深さ方向分布の観点から,FPP による微視組織の改質の有効性について言及している. 著者ら 44) も,同一の投射エネルギ条件(450 J)のもとで FPP およびショットピーニングを施し,結晶粒微細化効 果における FPP の優位性を実験的に明らかにしている. 図 2 は,種々の条件で処理を施した工業用純鉄の結晶粒 径の測定結果であり,投射エネルギが同一であれば FPP 材の結晶粒はショットピーニング材と比較して微細な ことがわかる.さらに同図から,単位衝突面積あたりの 粒子の総運動エネルギの増加に伴い,被処理材の結晶粒 が微細になる傾向が認められる.このことから,FPP の 場合には,投射粒子の有する運動エネルギが被処理面近 傍に集中的に投入されるため,材料の結晶粒を微細化さ せる効果が高いとされている. 図 3 は FPP により形成された微細結晶粒の観察結果の 一例であり,エネルギおよび角度選択性を有する反射電 子検出器を用いて SCM435H 鋼の縦断面を高分解能 FE-SEM(Carl Zeiss Ultra55)により観察した結果 45) であ る.FPP 処理面近傍では基材が折り重なっている様相を 呈し(図 3(a)) ,とくに基材が折り重なった部位の近傍に は極めて微細な結晶粒が形成されていることがわかる (図 3(b)) .高木ら 19),21),38) ,森田ら 49),50) ,亀山ら 7) は, 断続的な粒子の衝突により形成された基材表面の凹凸 が繰返し折畳まれることに起因して,特異な組織が形成 されることを報告している.また,図 3 に示した微細結 晶粒は, 従来のショットピーニング 36), 37) と比較して極め て短時間(10 s)で形成することができる.このことも, 前述の粒子の小径化に伴う総運動エネルギの増加に起 因していると考えられている. 図 2 単位衝突面積における投射粒子の総運動エネルギ と結晶粒径の関係 図 3 FPP により形成される微細結晶粒 3 微粒子ピーニング処理条件と疲労特性の関係 実部品に FPP を適用する際には,適切な処理条件を選 定する必要がある.FPP 処理条件は主に 2 種類に大別さ れ,投射圧力 31),43),50)-52) ,投射時間 36),37),43) ,投射角度 53) , 投射距離 30) 等のように処理装置環境に関わるもの,また, 投射粒子寸法 31),32),39),44),50),54),55) ,投射粒子硬さ 56)-61) ,被 処理材硬さ 49),59…”