“…スを取り込んでしまうことの発見 (Joinson, 1992)に 端を発する。共感疲労は,トラウマティックな出来 事を経験した人を援助する,もしくは援助しようと することによって生じる自然な結果としての行動や 感情と定義されており (Figley, 1995(Figley, , 2002 ,二次的 ト ラ ウ マ テ ィ ッ ク・ ス ト レ ス(secondary traumatic stress)と同義と考えられている。看護師には,その 職務の性質上,基本的な価値観として思いやりや共 感が求められやすく,実際,ホスピスや小児科,腫 瘍科など,様々な施設・病棟に勤務する看護師が, 共感疲労のリスクを抱えていることが知られている (Abendroth & Flannery, 2006;Komachi et al, 2012;Maytum, Bielski-Heiman, & Garwick, 2004;Potter et al, 2010) 。こうした看護師の共感疲労は,直接的には彼 らの健康状態に悪影響を及ぼし,間接的にも,生産 性の低下や離職率の上昇といったかたちで医療現場 に影響することにより,彼らが関わる患者に不利益 をもたらす (Pfifferling & Gilley, 2000) 。このような 点で共感疲労は重大な問題と考えられるため,その 改善や予防に繋がるような実証的研究の積み重ねが 求められる。 従来,共感疲労に関する臨床的指摘や理論的考察 は一定数認められるものの,看護師を対象とした実 証的研究の数はいまだ十分ではなく,特に我が国で はその数は極めて少ない。こうした我が国の状況は, 信頼に足る共感疲労の測定尺度を開発することで進 展する可能性がある。一方で,欧米においては近年, 共感疲労の測定尺度がいくつか開発されており,そ れらを用いた実証的研究が行われてきている。そう し た 研 究 の 多 く で 用 い ら れ て い る の が,Figley と Stamm に よ る 一 連 の 研 究 (Figley, 1995;Stamm, 2002Stamm, , 2010 (Maslach, Jackson, & Leiter, 1996)とされるが,対人援助職者が,それと共感疲労 とを区別して認識できるよう,両者を併せて測定する ための CFST が開発された (Figley, 1995) 。その後, 対人的な職務の影響について理解するためには,ネガ ティブな側面のみならず,ポジティブな側面をも含め た議論が必要であるという考えから, Stamm によって, 人々を援助することや職務をうまく行うことにより得 られる職業的喜びである共感満足という概念が提唱さ れ,それに関する下位尺度を含めた CSF が作成され た (Stamm, 2002; 。しかし,CSF は項目数が 66 項目と多く,回答者にかかる負担も大 きかったこと,また,CSF や CFST ではバーンアウト と共感疲労とを明確には区別できないことが明らか になってきたことから,それらの項目をベースに新 たな追加項目を含め,1,000 名を超える調査データを 元に,3 下位尺度,計 30 項目から成る ProQOL が開 発された (Stamm, 2002) 。なお,Stamm(2002 は,Professional Quality of Life(以下,専門職の QOL とする)を,対人援助職者が自らの職務との関連で感 じる QOL であると定義し,ネガティブ・ポジティブ の両側面を含むものとして概念化を行っている。そし て,それら両側面は,組織的および職務的な面からみ た労働環境,対人援助職者の個人的特質,そして職場 における一次的および二次的トラウマへの曝露,と いった要因から影響を受けると指摘している (Stamm, 2010) (Musa, 2009;Samson, Iecovich, & Shvartzman, 2016;Shen, Yu, Zhang, & Jiang, 2015) ,日本人看護師を対 象とした信頼性・妥当性の検討は行われておらず (Komachi et al, 2012 (Figley, 1995;Stamm, 2005)ため,PTSD の関連症状を測定す る Impact of Event Scale-Revised(以下,IES-R とする: Asukai et al, 2002)との間に正の相関がみられると予 測される。 「共感満足」については,苦悩を抱える人 を援助するという困難な経験の結果としてもたらされ る職業的な喜び (Stamm, 2002(Stamm, , 2010…”