摘要:仙台湾沿岸の海岸マツ林内に生育していた高木・亜高木層を構成するサクラ類について,津波被災 10 年 後の応答を調査した。計 90 本を対象に,2020 年夏季に樹冠部の樹勢,幹下部の地上 5 m 以下からの萌芽状況 を記録した。多くの主幹で樹冠部の梢端枯れが進行し,全体に主幹の樹勢の衰えが認められた。幹下部からは多 数の萌芽枝が確認され,平均 23.5 本(範囲 1-103 本)であったが,径 2-4 mm の細い萌芽枝が半数(50.2%) を占めていた。萌芽枝数は種間での有意差は認められなかった。径 4 mm 未満を除いた部位別の発生数を用い て主成分分析を行い,その主成分値でクラスター分析を行った結果,6 クラスターを得た。ヤマザクラ (71 本) は,上方部位で萌芽枝数が多くなるクラスターに属する主幹が比較的多い(36.7%)ことで特徴付けられた。カ スミザクラ(14 本)は,全体に萌芽枝数が少ないクラスターに属する主幹が多数を占めた(71.4%) 。ウワミズ ザクラ(5 本)は,上方部位の萌芽枝が無いか少数のクラスターに属する主幹が 80.0% を占めた。サクラ類は エネルギーの投入を萌芽枝に回すことで個体レベルでの枯死を免れており,今後の海岸林の再形成にはこの萌芽 枝が寄与する可能性が示唆された。 キーワード:東日本大震災,自然攪乱,梢端枯れ,萌芽部位,林冠再形成,レジリエンス OSAWA, Satoshi and ODAKA, Hinano: Study on tree vigor and sprouting of the surviving cherry trees after the tsunami disaster in the coastal forest near the Sendai Bay.