維持血液透析患者における生命予後予測因子としての 足趾上腕血圧比(Toe brachial pressure index)の有用性 1 小田原循環器病院心臓リハビリテーション室 2 小田原循環器病院腎臓内科 3 小田原循環器病院循環器内科 4 神奈川工科大学健康医療科学部臨床工学科 キーワード:生命予後,足趾上腕血圧比,血液透析,末梢動脈疾患 〈要旨〉 維持血液透析(HD)患者における足趾上腕血圧比(TBI)の予後予測因子としての有用性は不明である.本研究で は足関節上腕血圧比(ABI) ,TBI,皮膚灌流圧(SPP)を検査した 157 名の HD 患者の 5 年後の生存の有無と因子 を用いて予後因子解析を行った.Cox proportional hazards model を用いた検定の結果,TBI は独立予後因子であっ た(p <0.001) .また死亡予測の ROC 曲線では,TBI の cut off 値が 0.56,曲線下面積は TBI 0.91 で予測能が最も高 かった.算出された TBI の cut off 値を用いて TBI≧0.7 群,0.7>TBI≧0.56 群,TBI<0.56 群および Zero TBI sign 群に分類した結果,0.7>TBI≧0.56 群の生命曲線は TBI≧0.7 群と差がなかった.また,TBI<0.56 群が 0.7>TBI≧ 0.56 群よりも有意に低く(p <0.001) ,Zero TBI sign 群は TBI<0.56 群よりも有意に低かった(p =0.020) .TBI≧ 0.56 群の死因には心血管疾患を認めなかったが,TBI<0.56 群,Zero TBI sign 群でその死因が 4 割を占めていた. HD 患者において TBI は ABI および SPP より予後予測因子として有用であった.