Abstract:要旨精巣は白膜に保護されているが強い外力が加わると損傷を受け,陰嚢の痛みや腫脹を呈する。損傷した精巣を早期に同定し治療方針を決定することは,精巣機能温存のために重要とされる。われわれは精巣破裂でありながら,初発症状として陰嚢痛を訴えず下腹部痛のみを主訴とした症例を経験した。10歳代の高校生がバスケットボール中に相手選手と交錯し,下腹部痛を来して救急搬送された。腹腔内臓器損傷を疑いCT検査を行ったが,腹腔内臓器には明らかな損傷を認めなかった。経過観察後にも下腹部痛を訴えていたため再診察したところ陰嚢に圧痛を認めた。CTを見直すと撮影範囲に含まれていた右陰嚢内に血腫を認め,超音波検査では精巣輪郭の欠損を認めた。精巣破裂と診断し手術を施行した。下腹部痛を認めたため,患者も診察者も当初は下腹部を打撲したものと認識していたが,実際は陰部打撲による精巣破裂によって下腹部痛を来していたものと推測された。精巣破裂が下腹部痛を来す機序については,精巣捻転と同様に,陰嚢内を支配する精巣神経叢の構成によって説明されうる。咄嗟のことで患者自身が打撲部位を正確に認識できなかった鈍的外傷において,原因が判然としない下腹部痛を認めたときには,精… Show more
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