要旨　プレガバリンを過量服薬した正常腎機能患者に対してextracorporeal treatment（ECTR）を施行し，経過中の血中プレガバリン濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法（LC–MS）で測定した2例を経験したため報告する。症例1は49歳の女性。プレガバリン5,750mg，ベニジピン160mgなどを過量服用し救急搬送された。来院時，舌根沈下あり気管挿管した。洞停止が頻回にみられ，循環不全進行のためノルアドレナリン，ドブタミンを開始した。来院後11時間より血液濾過透析（hemodiafiltration: HDF）を開始し5時間施行した。プレガバリンの半減期はHDF前22.8時間，HDF中2.3時間であった。症例2は41歳の女性。プレガバリン3,225mg，アムロジピン65mgなどを過量服薬し救急搬送された。ICU入室後に意識レベルが低下したため，気管挿管した。来院後5時間より血液透析（hemodialysis: HD）を開始し4時間施行した。HD終了後に意識レベルの改善がみられた。正常腎機能患者のプレガバリン中毒に対してECTRを導入したところ，血中プレガバリン濃度は速やかに低下し早期の意識レベル改善，循環動態改善の効果が得られた。昏睡状態や呼吸不全，循環不全を合併する重症プレガバリン中毒に対しては，正常腎機能であっても早期の状態改善にECTRが有効である可能性が示唆された。

要旨【目的】当院では小児頭部外傷例を多く経験するが，abusive head trauma（AHT）は死亡例や機能予後不良例が多く対応に苦慮する。しかしながら，AHTの予後についての検討は進んでおらず，退院時の神経学的転帰不良例の臨床的特徴を調査する目的で当研究を行った。【対象】2014年4月1日～2020年3月31日に当科で入院管理を行った小児頭部外傷131例のうち，当院虐待防止チームによりAHTと判定された症例について後方視的に検討した。【結果】対象症例は14例で，月齢の中央値は5.5か月，男児が9例（64%），来院時GCSの中央値は9であった。神経学的転帰良好群（G群）が5例（36%），不良群（P群）が9例（64%）であった。P群では来院前のけいれん重積（p=0.01）と遅発性けいれん発作（p=0.03）が有意に多かった。また，同群では来院時GCS（p=0.04）と初診時pH（p=0.03）が有意に不良であった。来院前のけいれん重積状態は，有意に遅発性けいれん発作を発症し（p<0.01），神経学的転帰不良であった（p=0.01）。【結語】AHTにおける来院前のけいれん重積は，遅発性のけいれんの発症に関与し神経学的転帰不良に寄与する可能性がある。初診時の速やかで確実な止痙と，受傷後1週間程度は入院の上持続脳波モニタリングを行うべきである。