“…。2008 年から 2013 年までのカメラトラップ研究論文 266 本をレビュー した総説 (Burton et al, 2015)によれば,2008 年に 26 本だった論文数は 2013 年には 2.6 倍の 67 本にまで増加 した。ほとんど(94.8%)の論文が哺乳類を対象に含ん でいたが,分類群別にみると 64.7%が食肉目,40.2%が 偶蹄類を対象に含む一方で,霊長類を対象に含む論文 は 10.5%に留まっていた (Burton et al, 2015) 。さらに, 全体の 86.8%の論文が何らかの方法で分布や密度の推 定を目的としていた一方で,行動観察を目的としたも のは 32.3%に留まっていた (Burton et al, 2015) Naing et al, 2015;Nakashima, 2015;Norris et al, 2012;Rovero & De Luca, 2007) 。こういった調査はカメラトラップ法だけでなく, トランセクト法や地域住民への聞き取りなど複数の手 法を用いて行われることも多い。また,Vanthomme et al(2013)は哺乳類リスト作成から一歩踏み込んで, 各哺乳類種の地域的な在・不在が様々な人為的攪乱の 影響をどのように受けているかについて調べている。 霊長類のみを対象にした調査では,調査域における 対象種の存在をカメラトラップで確認した研究 (Easton et al, 2011)や,確認した結果に基づいて既存の分布域 の改訂を提案している研究 (Lhota et al, 2012;Martins et al, 2017)がある。映像はその種が存在することの強い 証拠となるため,地元住民などによってのみ確認され ていた稀な種の存在を確定したい場合などに,カメラ トラップは強力な武器になるだろう。ただし,狙った 種が撮影されるかどうかはカメラの設置場所や設置期 間,その種の生態の影響を大きく受ける。種多様性の 高い熱帯で稀な種も含めた哺乳類リストを完成させる ためには,数千日以上の合計カメラ稼働時間が必要で あると考えられている (Rovero et al, 2013) (Karanth, 1995 Burton, 2012;Hanekom & Randall, 2015;Nakashima et al, 2013;Zhang et al, 2017) ,そして占有率を推定した論文が 2 本 (Bowler et al, 2017Brodie & Giordano, 2013) De Moraes et al, 2014;Estienne et al, 2017;Lapuente et al, 2017;Luncz et al, 2017;Torralvo et al, 2017b) Olson et al, 2012;Tan et al, 2013) (Hofmeester et al, 2017;Rowcliffe et al, 2011) 。 あるいは,よりシンプルにどのような条件でも撮影確 率が 100%になる範囲をあらかじめ確かめ (Nakashima et al, 2018 (Engelbrecht, 2016;Olson et al, 2012;Wolovich et al, 2017) ラを用いて色彩や形態を分析した研究が数多くある霊 長類学において,これは意外な事実である (Caillaud e...…”