“…。一方で,高次 視覚野であるV5/MTでは,要素運動に選択的なニューロ ンに加え,パタン運動の方向に従った応答を示すニューロ ンも存在する 35,48,63,64) 。また,ネコやフェレットなどの食 肉目においても,類似した階層的運動処理が確認されてい ることから,階層的な運動処理はいくつかの種で共通する 特性だと考えられている 39,41,57,67) 。 一方で,霊長目と食肉目以外,特に鳥類を対象とした運 動統合の研究はほとんどなく,アナホリフクロウとハトを 対象にプラッド運動に対する神経応答を調べた2件のみで あり 7,21) ,プラッド運動の知覚方向を検討した行動研究もみ られない。著者らは,鳥類の知覚,認知モデルとして用い られるハト(Columba livia)を対象に,視運動統合の方略 を調べる一連の行動実験を行った 24,25) 。ハトは正弦波や ドットなど単純な運動刺激の速度や方向を弁別できるだけ でなく 2,29,44,47,51) ,生物的な運動(biological motion)の弁 別や運動から3次元形状の知覚を行うことが示されてい る 20,22,60,73,81) 83) 。attentive trackingと関連して,視覚運動の 処理には輝度等の時空間相関を検出する1次元的な検出機 構とは別に,視野上の顕著性が高い対象を2次元的に追跡 する3rd order motion も利用されるという仮説が提案され ている 42) 。プラッド運動の IOC 方向は刺激内の2次元的な チェッカーボード模様の移動方向と一致しているため, IOC 方向の知覚が2次元的な特徴追跡(feature tracking) によるものだとする主張もある 3,12,13,17) 。3rd order motion は低コントラストかつ高時間周波数では機能しないが,プ ラッド運動をこのような低コントラストかつ高時間周波数 の正弦波から構成するとIOC 方向の知覚が阻害される 71) 。 また,3rd order motion が周辺視野で働かないことも,プ ラッド運動の IOC 方向の知覚が周辺視で阻害される特性と 一致する 43) 。プラッド刺激に含まれる2次元的な特徴が増 えるほど IOC 方向の知覚が正確になることも,IOC 方略が 2次元的な特徴追跡と関係することを支持する 10,52,59,79) 16,38) 。霊長目,食肉 目,フクロウ目に共通するのは thalamofugal 経路が発達し ていることであり,初期視覚領域のV1や視覚 Wulstは傾 き選択性を含め,共通した視覚応答特性を示す 59,69) 。ハト では網膜からの投射の多くはthalamofugal 経路ではなく tectofugal 経路に連絡している 62) 。tectofugal 経路の視蓋 や内外套を損傷したハトは,オペラントボックスでの明る さや形の弁別課題…”